大台ヶ原山の最高峰、日出ガ岳が目前
【概要】
ツアー６日目。いよいよツアーも最終日となった。「大台ヶ原に登って雨に遭わなかったらよほど精進のよい人といわれる。町で一年かかって降る雨を、ここでは一月足らずで降ってしまうのである」とは深田久弥「日本百名山」の一節。登山の手始めに大台ヶ原ビジターセンターに立ち寄ったら、大台ヶ原の降雨量はあの屋久島よりもはるかに多いことを知った。大台ヶ原は世界有数の降雨地でもあった。それが今日の雲ひとつ無い快晴というのだから天候はわからない。ボク達はよほど精進が良いか、あるいはよほど精進が悪いかのどちらかだろうと思った。このツアーで初めてサングラスをザックから取り出した。
大台ヶ原は紅葉狩り目的の観光客で早朝から大混雑の様相。駐車場は早朝から満車となっていてはるか手前から路上駐車のマイカーが鈴なりだった。幸いマイクロバスや観光バスだけは駐車場までの通行が許可されているらしく問題はなかったがこの大混雑振りはまるでひと昔前の尾瀬を見ているかのようだ。シャトルバスの運行がされていないのが不思議だった。
この大台ヶ原山の最高峰は日出ガ岳で単なる往復ならば１時間程度の行程。通常は日出ガ岳から尾鷲辻、大蛇嵓を回る一周コースが一般的のようだが今回は飛行機の予定時間もあって尾鷲辻からビジターセンターへと戻るおよそ半分の行程が組まれていた。ハイキングコースとあってゆったりとした歩き出しから始まった。日曜日ということもあるのだろう。子供連れのファミリーや若い人も非常に多くすれ違いに苦慮するほどだった。世界遺産に登録されているとあってそこらじゅうに標識や標柱が目立った。ガイドからは今日も懇切丁寧な植物の説明などがあり近くの登山者も耳をそばだてて聞いている。のんびりと歩いていても日出ガ岳には約１時間ほどで到着した。見晴台に立つとそこからは大パノラマが広がっていた。おかげで昨日は見えなかった大峰山の全景がすべて見渡すことができて感無量。反対側を見れば意外な近さに熊野灘がある。パノラマを思う存分に楽しんでから今度は正木ガ原へと進んだ。トウヒの立ち枯れが目立つ風景が特徴的。正木ガ原周辺はイトザサが美しく一帯に広がるその様まるで絨毯のようだ。ここでも熊野灘をバックに記念撮影したりしながらのんびりとする。昔は鹿の群れ遊ぶ姿も見られたらしいのだが、今は鹿害を防ぐためにあらゆる方策がとられていて時代の変化を今更ながら思うばかり。尾鷲辻からは右折して大台ヶ原ビジターセンターへ戻った。約３時間ほどの”山登り”だったが十分に満喫した思いに満たされる。
バスに乗り込み大台ヶ原ビジターセンターを１１時３０分に出発。途中、吉野町の町立老人福祉センター中荘温泉に立ち寄りこの１週間の汗を流す。帰路は伊丹空港１８時発の空路で羽田へと戻る予定だが休日の高速がどのくらいの渋滞に巻き込まれるか予想できないらしく中荘温泉出発は午後２時。余裕をみて４時間ほどを考えていたらしかったが日中の高速道路はほとんど渋滞に遭わなくて半分の２時間ほどの所要時間であっけなく空港に到着。おかげで空港内では買い物や大阪名物などを食べながらゆったりする時間がとれてみんな大満足だったようだ。このツアーは６日間歩きっぱなしとあって天気、体調などが心配だったが、振り返ってみるとこれといったアクシデントなどもなく、また強風に晒されたとはいえ大雨にも遭わずおおむね天候には恵まれたほうだろう。何よりもこうして無事に５座登頂できたことが大きい。なにしろ一座でも途中で中止になれば再びこの遠隔の地まで足を運ばなければならないのだ。道中いろんな事があったがしばらく思い出に残る６日間になりそうだった。
