残雪豊富な飯豊連峰
西俣ノ峰から
【概要】
西俣ノ峰から頼母木山は２年ぶりに登る。昨年も頼母木山をめざそうとしたのだが諸事情から枯松峰から引き返している。このところ連日のように晴天が続いていて天候の心配はなさそうだった。頼母木山までとなると長丁場なので早立ちしたかったのだがぐずぐずしているうちに瞬く間に時間が過ぎて行った。おまけに熊鈴を車に忘れたことに気付き途中で戻ったりしたものだからさらに遅くなった。ロスしたのは奥川入荘から登山口までの往復２km。この時間の浪費のために出鼻をくじかれてしまい今日はもしかしたら頼母木山までは無理かもしれないといささか弱気になってしまった。
朝から強い日射しが登山道に降り注いでいた。まだ５月というのに今日も暑い一日になりそうだった。大曲りを過ぎても雪はほとんどなかったが残雪は十文字池からようやく現れる。雪はかなり豊富という印象だ。しばらく夏道を登ってゆくと西俣ノ峰直下からはほぼ雪上歩きとなった。斜度はかなりあっていささかも気は抜けない。しかし雪は柔らかいのでアイゼンは不要だった。西俣ノ峰からは視界が一気に広がる。正面には鉾立峰と杁差岳。そして飯豊本山から頼母木山に至る主稜線がすべて見渡せるようになった。足元にはイワウチワやカタクリが群落となって咲く。そして新緑に映えるタムシバやムラサキヤシオが美しい。西俣ノ峰からは再び夏道に沿って進むものの枯松峰が近くになると完全に夏道が消失。雪上にあがると残雪は豊富でどこでも歩いて行けそうだ。枯松峰は午前１０時。ここまで４時間近くかかったがもちろん原因は出だしのロス時間である。杁差岳がいよいよもって至近距離に迫り雄大な飯豊連峰も一望となる。その迫力は息を呑むほどだ。そこらじゅう写真を撮りながら休憩しているうちに少しずつ元気も回復してくる。行けるところまでいってみようかと頼母木山へとむかうことにした。枯松峰からもほとんど残雪歩きとなった。三匹穴はすぐ近くを通過。見渡す限り雪の斜面が広がっていて今年の残雪の多さに驚くばかり。前方を見上げると地神山や頼母木山の稜線が見えた。頼母木平へはいったん夏道に上がった。一帯は笹薮となっていてしばらくヤブ漕ぎを強いられる。ヤブはせいぜい腰高程度だがそれにしても気が滅入る。かろうじて途中にわずかに残る赤テープを頼りにしながら笹薮を少しずつ進んでゆく。登り切ったところでようやくヤブから抜け出しホッとする。平坦な頼母木平からは右手に小箱のような頼母木小屋があり背後に見えるのは二王子岳だった。さらに右方向には大石山、鉾立峰、杁差岳があり飯豊の主稜線にようやく上がったのを実感した。頼母木平からは約１５分で頼母木山に到着した。登り初めておよそ６時間。２年前は４時間半ほどの所要時間だったことを思えば今回はあまりに時間がかかっている。疲れもハンパではなかったがそれだけに達成感はひとしおだった。他に登ってくる人もなく稜線を見渡しても人の姿はない。今日の飯豊連峰は貸し切りのようだった。
下りもほぼ順調に高度を下げる。しかし下るほどに暑さが厳しさを増し水が途中で切れてしまった。水はテルモスも含めて全部で２リットルあったのだが今日のような暑さではさすがに足りなかった。途中で雪を水筒に詰めたのだがなかなか水にならなくってまいった。ちょうどこの頃からヘリの音が遠くで聞こえていた。登山口に降り立ち奥川入荘に向かっているとボクの頭上すれすれにヘリが轟音を上げて近づいてきて驚いた。この時はまだ知らなかったがこの西俣尾根で遭難騒ぎが発生していたらしいのだ。奥川入荘では警察官数名が庭先で待っていた。ボクは一時遭難者に間違われていたようだった。
